30社近く見て、最後に家を任せたのは「考えてくれる人」だった。

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家を建てようと思い、住宅展示場へ行った。

展示場に入ると、すぐに営業担当者から声をかけられる。

最初のころは、言われるがまま説明を聞いていた。

モデルハウスを一軒見て、説明を聞いて、アンケートを書いて。

そんなことをしていると、一日に回れるのはせいぜい2軒か3軒だった。

それでも何社か回ってみると、それぞれのメーカーが何に力を入れているのかは、だんだん分かってくる。

構造。

断熱。

耐震。

デザイン。

設備。

そして、娘が車椅子で生活していることを伝えると、

「バリアフリーも対応できます」

と、どのメーカーも答えた。

最初は、

家というのは、メーカーによってデザインの違いはあっても、中身はそれほど変わらないのかもしれない。

そんなふうに思っていた。

車もメーカーによってデザインや乗り味に特徴がある。

家も、それに近いものなのかな、と。

でも、何社も話を聞いているうちに気づいた。

家づくりでは、その先の方がずっと大切だった。

「できます」の先を聞きたかった

私たちが欲しかったのは、単に段差のない家ではなかった。

娘が車椅子で暮らしやすいこと。

介護する私たちの負担が少ないこと。

でも同時に、

吹き抜けが欲しい。

中庭も欲しい。

薪ストーブも置きたい。

好きな車が見える家にしたい。

そして、いかにも「介護のためにつくられた家」にはしたくない。

そんな、少し面倒な要望がたくさんあった。

「バリアフリーにできます」

と言ってもらうだけなら簡単だった。

知りたかったのは、

その人が、私たちの暮らしをどこまで想像してくれるのか。

そこだった。

3回くらい会うと、だいたい分かってくる

私は結果的に、30社近くの人と話をした。

もちろん、最初から30社を見るつもりだったわけではない。

なかなか、

「この人と家をつくりたい」

と思える人に出会えなかったのだ。

担当者とは、だいたい3回くらい会うと、その人のことが少し見えてくる。

話を聞いてくれる人なのか。

自分の会社の商品を売りたい人なのか。

こちらの質問に対して、分からないことを分からないと言える人なのか。

バリアフリーについて詳しいか。

詳しくなければ、調べようとしてくれるか。

そして意外と大切だったのが、

デザインの感覚が合うかどうか。

家は、数字だけではつくれない。

どんな空間を心地いいと思うか。

何を格好いいと思うか。

そういう感覚があまりにも違うと、こちらの希望を伝えるだけでも大変になる。

もちろん予算もある。

数回話した段階で、いったん見積もりを出してもらい、現実的に予算内に収まりそうかも見た。

人。

提案。

デザイン。

そして価格。

それらを一つずつ見ながら、候補を絞っていった。

図面だけでは分かりにくい空間も、模型になると一気にイメージしやすくなった。

土地を見せたとき、その人だけ違うことを言った

最終的にお願いした担当者を、

「この人はちょっと違う」

と思った瞬間がある。

土地を見てもらったときだった。

一般的に、家は南側を空けて日当たりを確保する。

私も、それが普通だと思っていた。

ところがその担当者は、土地を見て、

「中庭は北側にした方がいいと思います」

と言った。

理由を聞くと、

「南側に大きな窓をつくると、夏はかなり暑くなります。せっかく大きな窓をつくっても、結局カーテンを閉めっぱなしになるかもしれません」

という。

そして続けた。

「北側でも、吹き抜けをつくれば十分明るくできます。むしろ、そのくらいの光の方がちょうどいいと思います」

これは、それまで聞いたことのない提案だった。

南側を空ける。

大きな窓をつくる。

陽当たりを確保する。

そんな「住宅のセオリー」をそのまま当てはめるのではなく、

私たちが実際にそこでどう暮らすかを考えてくれた。

そこが大きかった。

土地の形だけでなく、車椅子の動線や外構まで含めて、家全体を考えていった。

土地そのものは、当初の予算を超えていた。

だから担当者には、かなりはっきり伝えた。

土地で予算を使ってしまった以上、

建物は予算内で、なおかつ私の要望をできるだけ叶えたい。

それができるなら、お願いしたい、と。

無茶な注文だったと思う。

それでも、一つずつ一緒に考えてくれた。

そして、北側に中庭を置く案も具体化していった。

北側の中庭は、大正解だった

家が完成して、実際に暮らしてみた。

北側につくった中庭はどうだったか。

私は今でも、

大正解だったと思っている。

吹き抜けから光が入る。

空が見える。

でも、南側から強烈な日差しが差し続けるわけではない。

カーテンを閉め切らなくても過ごせる。

リビングから中庭が見えることで、家の中にも奥行きが生まれた。

図面で見ていたとき以上に、気持ちのいい場所になった。

北側につくった中庭。それでも吹き抜けから光が入り、空が大きく見える。暮らしてみても、この提案は大正解だった。

大きな窓をつくっても、カーテンを閉めっぱなしにしない家

私は、大きな窓のある家が好きだった。

せっかく窓をつくるなら、外とのつながりを感じたい。

だから、

「大きな窓をつくったのに、暑すぎてずっとカーテンを閉めている」

という担当者の言葉は妙に腑に落ちた。

実際、この家では中庭に面した大きな窓を通して、外の景色を楽しむことができた。

娘も車椅子のままリビングから中庭へ出ることができた。

家の中と外が、ゆるやかにつながっている。

これは、私が思い描いていた暮らしにかなり近かった。

リビングと中庭は大きな窓でつながる。窓の向こうに空や緑があるだけで、部屋の感じ方もずいぶん変わった。

いい担当者でも、分からないことはあった

ただ、この担当者が何でも知っていたわけではない。

むしろ、最後まで明確な答えが出なかったこともある。

一つは、吹き抜け。

しかも2階のセカンドリビングにはドアをつけなかった。

これだけ空間をつなげて、本当に冷暖房は効くのか。

もう一つは、

玄関からリビングへ入るところにもドアをつけなかったこと。

玄関。

リビング。

吹き抜け。

2階。

かなりの空間がつながっている。

担当者にも、ここまで開放的につくった前例はほとんどなかったようで、

「絶対に大丈夫です」

とは言わなかった。

私も多少は不安だった。

ところが、暮らしてみるとまったく問題なかった。

玄関、リビング、吹き抜け、2階まで、空間をできるだけ分断しなかった。それでも実際の暮らしで冷暖房に困ることはなかった。

もちろん、すべての家で同じとは言えない。

わが家の場合は、ペアガラスや断熱性能に加え、天井のシーリングファンなども効いているのだと思う。

ただ、ここで大切なのは、

担当者が答えを持っていなかったことではない。

分からないことまで、

「大丈夫です」

と言い切らなかったこと。

こちらの希望を聞いて、できる方法を一緒に考えてくれたこと。

今振り返ると、私はそこを信頼したのだと思う。

家づくりでは「何が好きか」を準備しておく

30社近く見たからこそ、これから家を建てる人に一つ伝えたいことがある。

最初から、

「私はこのメーカーで建てる」

と決めている人もいると思う。

それでも、少しでも家にこだわりがあるなら、私は複数のメーカーや担当者と話してみることを勧めたい。

比較すると、初めて見えるものがあるからだ。

そして、もう一つ。

自分がどんな家を好きなのかを、できるだけ具体的にしておく。

私は雑誌やインターネットを見ながら、

「このリビングが好きだ」

「こんなキッチンにしたい」

「こんな寝室がいい」

「こんなテラスが欲しい」

と思った写真を集めた。

ただし、バラバラに保存するのではなく、

リビング。

キッチン。

寝室。

テラス。

階段。

手すり。

照明。

というようにカテゴリーごとに整理した。

言葉だけで、

「シンプルで格好いい感じ」

と言っても、人によって思い浮かべるものは違う。

でも写真を見せれば、

「こういうことですね」

と、一気に共有できる。

これは、やっておいて本当によかった。

最後に選んだのは、会社ではなく「考えてくれる人」だった

30社近く話を聞いた。

振り返れば、少し多かったと思う。

でも、その時間が無駄だったとは思わない。

たくさんの会社を見たからこそ、

家づくりで大切なのは、会社の名前だけではないことが分かった。

これから家づくりを始める方へ

私のように住宅展示場を何十社も回る前に、まず自宅で複数の住宅会社を比較してみるのも一つの方法だと思います。

私自身、家を建てた当時にこういうサービスをうまく使っていれば、最初の会社選びはずいぶん楽だっただろうなと思います。

ただ、資料だけでは決められなかった

もちろん、資料をたくさん見れば家を建てる会社が決まるわけではありません。

むしろ、最後は「人」でした。

もちろんメーカーの技術力や商品力は重要だ。

でも最終的には、

こちらの話を聞く。

分からないことを調べる。

こちらがまだ言葉にできていない希望まで想像する。

そして、

「こうしてみたらどうですか」

と提案してくれる。

そんな人に出会えるかどうかが、とても大きいと思う。

私たちの土地を見て、

「北側に中庭をつくりましょう」

と言った担当者。

あの一言がなかったら、今とはまったく違う家になっていたかもしれない。

家を建ててから年月が経った今でも、

私はこの担当者にお願いしてよかったと心底思っている。

そして中庭を見上げるたびに、

家づくりで選ぶのは、メーカーだけではない。
一緒に考えてくれる「人」なのだ。

そう思う。

家づくりを進めていると、

「この提案で本当にいいのかな」と迷うことがあります。

住宅会社とは少し違う立場の人に、一度話してみたい。

そんなときに、私の経験がお役に立てるかもしれません。

「介護のための家」ではなく、「この先何十年も、家族が自分たちらしく暮らせる家」を一緒に考えてみませんか。

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この記事を書いた人

53歳、転勤族のサラリーマンです。
障害のある娘との暮らしをきっかけに、
43歳で家を建てました。

介護、子育て、仕事、家づくり。
いろいろあったけれど、振り返れば、
それも全部わが家の時間でした。

今は、妻との旅や車、住まいを楽しみながら、
これまでのこと、そしてこれからのことを
書いています。

いろいろあった。だからこそ、今を生きる。

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