妻が欲しがった薪ストーブ。私は正直、いらないと思っていた。

家を建てることになったとき、妻にはいくつか「どうしてもやりたいこと」があった。

その一つが、

薪ストーブだった。

私はというと、正直なところ、あまり乗り気ではなかった。

エアコンがある。

わざわざ薪を用意して、火をつけて、燃やす。

どう考えても面倒くさい。

最初は珍しくて使うだろうけれど、そのうち使わなくなるんじゃないか。

そんな気がしていた。

しかも、わが家は吹き抜けにする予定だった。

こんなに大きな空間を、薪ストーブ一台で本当に暖められるのか。

結局、

「薪ストーブもつけて、エアコンもつける」

なんてことになったら、なんとも非経済的な話だ。

煙突まで含めると、確か100万円くらいは上乗せになると言われた記憶もある。

私の中では、

なくてもいい設備

だった。

妻が欲しかったのは、「暖房」ではなかった

でも、妻が薪ストーブを欲しがった理由は、単に家を暖めるためではなかった。

娘のためだった。

エアコンから出てくる暖かい風ではなく、

薪が燃える、丸みのあるような暖かさ。

ゆらゆら揺れる炎。

薪が燃えるときの、パチパチという音。

そういうものを感じながら、

娘に心穏やかに過ごしてほしい。

妻は、そんなことを考えていた。

私はそこまで考えていなかった。

だから、

「そこまで言うなら、薪ストーブを付ける方向で調べてみようか」

ということになった。

吹き抜けのリビングで、薪ストーブのそばに娘と。妻が欲しかったのは、暖房設備というより、こんな時間だったのかもしれない。

東京で薪ストーブなんて、本当にできるのか

付ける方向にはなったものの、私はまだ半信半疑だった。

そもそも東京の住宅街で薪ストーブなんて使えるのか。

煙は大丈夫なのか。

近所迷惑にはならないのか。

当時、自分たちなりに条例や使用条件について調べた。

心のどこかでは、

「さすがに東京では無理なんじゃないの?」

と思っていた。

ところが、きちんと燃焼させ、煙を抑えられるタイプのものなら検討できそうだということが分かった。

私の反応は、

「やったぁ!」

ではない。

「ホントなの〜?」

だった。笑

仕方なく、と言ったら妻に怒られそうだけれど、薪ストーブのカタログを見始めた。

すると、

「あれ?」

と思った。

種類がものすごく多い。

そして、

結構、格好いい。

そこからだった。

興味がなかった私にも、火がついた

カタログだけでは分からなくなってきた。

実物を見たい。

そう思った。

でも、薪ストーブが置いてある家なんて、そうそうない。

住宅会社の担当者に聞いても、薪ストーブを入れる家を担当するのは初めてだという。

結局、妻と二人で遠くまで薪ストーブの専門店へ出かけた。

そこで、いろいろな話を聞いた。

吹き抜けがあっても、部屋だけではなく家全体を暖められること。

煙を抑えるタイプでも、火の付け方が悪ければ煙は出ること。

では、

そもそも、なぜ煙が出にくくなるのか。

仕組みまで聞き始めた。

この頃には、

完全に私にも火がついていた。笑

ようやく届いた薪ストーブ。最初はあれほど乗り気ではなかったのに、この頃にはすっかり楽しみになっていた。

どうせ付けるなら、格好いいものがいい。

そこからは、かなりこだわった。

薪ストーブというと、ずんぐりした昔ながらの形を想像していたけれど、探してみるとデザインもさまざまだった。

最終的に選んだのは、

場所をあまり取らない縦型の薪ストーブ。

炎が縦に大きく見える。

黒い本体も、白と黒を基調にしたわが家に合う。

最初はいらないと言っていた人間が、最後にはデザインまで細かく選んでいる。

こういうことは、家づくりではよくある。笑

最終的に選んだのは、場所を取りにくい縦型。炎が大きく見えるデザインも気に入った。

最初は、火をつけるだけで一苦労だった

薪ストーブのある暮らし。

実際に始めてみると、最初から優雅だったわけではない。

まず、

火がうまくつかない。

煙も出した。

一度は周囲の家に迷惑をかけてしまい、謝りに行ったこともある。

これはかなり焦った。

でも、何度かやるうちに、火の付け方もだんだん分かってきた。

きちんと燃え始めると、炎が安定する。

そして驚いたのが、暖かさだった。

吹き抜けがあるから心配していたけれど、シーリングファンで暖かい空気を回すと、家の中は十分暖かくなった。

薪ストーブを使う日は、エアコンを使わないことも多かった。

炎を見ていると、何も考えなくていい

そして、使ってみて初めて分かったことがある。

薪ストーブの魅力は、

暖かさだけではなかった。

家の中で、薪がごうごうと燃えている。

最初は不思議な感じがした。

でも、その炎を見ていると飽きない。

揺れる。

形が変わる。

薪が崩れる。

時々、パチッと音がする。

テレビを見るでもなく、

スマホを見るでもなく、

ただ火を見る。

何も考えなくていい。

これは、ちょっとした贅沢だった。

妻が言っていたことが、少し分かった気がした。

娘が炎を見て何を感じていたのかは、もちろん私には分からない。

でも、私たち自身の気持ちが緩んでいたことは確かだった。

ゆらめく炎と、薪が燃える音。娘だけでなく、私たちにとっても気持ちが緩む時間になった。

もちろん、薪ストーブには手間がかかる

ここまで書くと、

「薪ストーブ、最高です」

という話に見えるかもしれない。

でも、ちゃんと面倒なこともある。

その一つが、

燃やす木の確保。

薪は勝手に家までやってこない。

安く分けてもらえる材木屋さんを見つけて、妻と一緒に木材の切れ端をもらいに行ったこともある。

車に積めるだけ積んで帰る。

当時乗っていたエルグランドの車内が、木材でいっぱいになった。

Screenshot

材木屋さんから分けてもらった木材の切れ端を、エルグランドいっぱいに。薪ストーブのある暮らしは、燃やす前の準備もなかなか大仕事だった。

そして、もう一つ。

家を建てるときに、意外と考えていなかったことがある。

薪をどこに置くか。

薪ストーブそのものの設置場所は考えた。

煙突も考えた。

でも、薪置き場までは深く考えていなかった。

「まあ、なんとかなるだろう」

と思っていた。

実際、なんとかはなった。

ただ、

家づくりをもう一度するなら、最初からちゃんと薪置き場を考える。笑

薪置き場までは、家を建てるときに深く考えていなかった。結局、中庭の一角が薪の定位置になった。

さらに年に一度、10月頃になると煙突掃除を業者さんにお願いしている。

費用は、だいたい5万円程度。

薪の調達。

運搬。

保管。

火起こし。

灰の処理。

煙突掃除。

エアコンのスイッチを押すだけとは、まったく違う。

だから、

誰にでも薪ストーブをおすすめします

とは言えない。

面倒なものが嫌いな人には、たぶん向いていない。

ちなみに私は、

もともと、その「面倒だからいらない」と言っていた側の人間だ。笑

それでも、次の家にも入れる

では、もしもう一度家を建てるなら。

薪ストーブを入れるか。

これは迷わない。

入れる。

いや、

今度は薪ストーブではなく、

暖炉にしたい。

炎をもっと大きく見たい。

そこでピザを焼いたり、

料理をしたり、

もっと火そのものを楽しみたい。

最初は、

「そんなの、そのうち使わなくなるよ」

と言っていた人間が、

今では次の暖炉のことまで考えている。

人生、分からないものだ。笑

でも、薪ストーブを入れて一番よかったのは、

家が暖かくなったことだけではない。

冬になると火をつける。

家族で炎を見る。

パチパチという音を聞く。

その時間が、

いつの間にか、わが家の冬の風景になった。

妻が家を建てる前に思い描いていたのは、

きっと、こういう時間だったのだと思う。

今を、生きる。

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この記事を書いた人

53歳、転勤族のサラリーマンです。
障害のある娘との暮らしをきっかけに、
43歳で家を建てました。

介護、子育て、仕事、家づくり。
いろいろあったけれど、振り返れば、
それも全部わが家の時間でした。

今は、妻との旅や車、住まいを楽しみながら、
これまでのこと、そしてこれからのことを
書いています。

いろいろあった。だからこそ、今を生きる。

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