家を建てるとき、どうしても欲しかった場所がありました。
2階の、セカンドリビングです。
「リビングなら1階にあるじゃないか」
そう言われれば、その通りです。
それでも私は、2階にもリビングが欲しかった。
ただし、1階のリビングを小さくしたような場所にはしたくありませんでした。
同じ家の中にありながら、少し違う時間が流れる場所。
家族がずっと一緒にいるためではなく、
それぞれが、それぞれの時間を過ごせる場所。
今振り返ると、そんな空間をつくりたかったのだと思います。
吹き抜けの向こうに、もうひとつの居場所

2階に上がると、吹き抜けを囲むように廊下があり、その先にセカンドリビングがあります。
黒いアイアンの手すり。
白い床。
大きなゴムの木。
そして、その奥にソファ。
完全な個室ではありません。
1階とは吹き抜けでつながっている。
家族の気配は感じるけれど、少し離れている。
この「つながっているけれど、離れている」という距離感が、私は好きでした。

大きなゴムの木をここに置いたのも、気に入っています。
下から見上げると、植物の枝が吹き抜けの空間へ伸びていく。
夜、照明をつけると葉の影が天井や壁に映ります。
昼とはまったく違う表情になります。
家を建てたとき、私は「空間」をつくっているつもりでした。
でも実際には、光や影、植物の成長まで含めて、家の景色は少しずつ変わっていくんですね。
1階と同じリビングには、しなかった

セカンドリビングにはソファとテーブルを置きました。
テレビもあります。
それだけを聞くと、1階のリビングとあまり変わらないように思えるかもしれません。
でも、意識したのは、
「1階と同じ場所を、もうひとつつくらない」
ということでした。
ここは少し小さくていい。
少し閉じていていい。
そして、すぐ横には外へ出られるテラスをつくりました。

ソファに座ると、その先にテラスが見えます。
つまり、この部屋だけで完結していません。
室内と外を合わせて、ひとつの場所にしたかったのです。
白い家に、青い床を入れた

テラスの床には、青いタイルを選びました。
今考えると、なかなか思い切った選択です(笑)。
家全体は白を基調にして、黒をアクセントにしています。
そこに突然、青。
普通なら、グレーやベージュを選んだ方が無難だったかもしれません。
でも、この場所だけは少し違っていていいと思いました。

施工中の写真を見ると、まだ何もありません。
青いタイルだけが、少しずつ敷かれていく。
完成した姿を頭の中では想像していましたが、本当に合うのか。
この段階では、多少不安だった記憶もあります。
そして完成すると――。
白い壁。
青い床。
オリーブの緑。
黒い家具。
結果的には、この組み合わせがとても気に入りました。

室内とは明らかに違う。
でも、黒い窓枠や家具によって、家全体とはちゃんとつながっている。
狭いテラスですが、私にとっては十分でした。
ちなみに、このテーブルは自作です
写真の真ん中にある丸いテーブル。
実はこれ、私がつくりました(笑)。

既製品でちょうどいいものを探していたのですが、なかなか見つからない。
だったら自分でつくってしまおう、と。
ものすごく立派なDIYではありません。
よく見ると、手づくり感もしっかりあります(笑)。
でも、このテラスには妙に似合っています。
家づくりをしていると、
「完成した家に、自分たちが暮らす」
と思いがちです。
でも実際は逆なのかもしれません。
暮らしながら家具を置き、植物を育て、ときには自分で何かをつくる。
そうやって少しずつ、
家のほうが、自分たちの暮らしに近づいてくる。
そんな気がします。
一本のオリーブで、景色が変わった

このテラスには、オリーブの木を置きました。
昼間は、白い壁と青いタイルの中で緑が映えます。
でも、この木の本当の魅力を知ったのは夜でした。

下からライトを当てると、枝と葉の影が白い壁いっぱいに広がります。
一本の木なのに、壁には何倍もの大きさの木が現れる。
風が吹けば、その影も揺れます。
高価な装飾を置いたわけではありません。
壁に絵を掛けたわけでもない。
植物と光だけです。
それでも、夜になると昼間とはまったく違う場所になる。
これは、つくってみて初めて分かった楽しさでした。

そして私は、この景色をテラスだけのものにはしたくありませんでした。
室内のソファからも、オリーブが見えるようにしています。
窓を一枚挟んだ向こう側に、ライトアップされた木がある。
夜、部屋を少し暗くすると、窓そのものが一枚の絵のようになります。
一番こだわったのは、実は照明だった
そして、この2階をつくるとき。
私が最も細かく考えたのが、照明です。

壁に四角い照明を配置しました。
単に「この辺に付けてください」ではありません。
位置も、高さも、間隔も考えました。
なぜそこまでこだわったのか。
理由があります。
この光を、室内だけで終わらせたくなかったからです。

テラスの壁にも、同じリズムで照明を配置しました。
写真では反射しているようにも見えますが、そうではありません。
外にも実際に照明があります。
室内の壁を進んできた光が、そのまま窓を越えて外へ続いていく。
室内。
窓。
テラス。
それぞれを別の空間として切るのではなく、光でつなげたかった。
だから、照明同士の間隔も考えました。

夜、この照明をつけると、狙っていた景色が現れます。
内側から始まった光のリズムが、そのまま外へ伸びていく。
家づくりには、大きな決断がたくさんあります。
間取り。
キッチン。
浴室。
床。
壁。
窓。
でも、暮らし始めてから毎日のように目にするのは、案外こういう小さな部分だったりします。
数センチ、数十センチの位置を考えた照明を、今でも眺めることがあります。
たぶん、こういうところに私は一番こだわる人間なんでしょう(笑)。
昼とは違う家になる

照明を考えるとき、明るさだけを求めませんでした。
影も欲しかった。
植物に光が当たる。
その影が白い壁や天井に伸びる。
吹き抜けがあることで、その影はさらに大きくなります。
昼間は白く、明るい家。
夜になると、光と影の家。
同じ場所なのに、時間によってまったく表情が違います。
私は、この家の夜が好きでした。
でも、一番使ったのは私ではなかった
ここまで書くと、
「ずいぶん自分のためにつくった場所なんですね」
と思われるかもしれません。
その通りです(笑)。
セカンドリビングをつくりたいと言い出したのは、私でした。
夜は、私がここで過ごすことが多かった。
1階とは少し離れた場所でテレビを見たり、ひとりでゆっくりしたり。
では、昼間はどうだったか。
妻が使っていました。
テレビを見ながら、洗濯物を畳む。
そんな場所になっていました。
私は夜。
妻は昼。
同じ部屋なのに、時間によって使う人が違ったのです。
そして今は、ほとんど妻の場所になった

年月が経って、暮らし方も変わりました。
今、このセカンドリビングを一番使っているのは――
妻です(笑)。
テレビを見たり。
動画を編集したり。
自分の時間を過ごしたり。
私が欲しいと言ってつくった場所なのに、今ではすっかり妻の居場所になりました。
でも、それでよかったと思っています。
むしろ、この場所を1階と同じようなリビングにしなくて、本当によかった。
もし同じような部屋を二つつくっていたら、どちらか一方は使わなくなっていたかもしれません。
用途を決めすぎなかったからこそ、
その時々の暮らしに合わせて、役割を変えることができた。
家は、完成したときが完成ではない
家を建てた頃の私は、かなり細かいところまで考えていました。
照明の位置まで計算して、
タイルの色を選んで、
植物を置いて、
テーブルまで自分でつくった。
自分なりの「完成形」があったのだと思います。
でも、長く暮らしてみて分かりました。
家は、図面どおりに完成した瞬間が完成ではありません。
そこに人が暮らして、
予定していなかった使い方をして、
植物が大きくなって、
家具の位置が変わって、
家族の生活も変わっていく。
そうやって初めて、
その家にしかない景色ができていく。
私が欲しいと言ってつくったセカンドリビングは、
昼間は妻が洗濯物を畳む場所になり、
今では妻が動画を編集する場所になりました。
それでいい。
いや、
たぶん、それがいい。
家は、人に使われながら変わっていくものだから。
そして気がつけば、
ただの「部屋」だった場所が、
誰かにとっての、
居場所になっている。
それが、家をつくるということなのかもしれません。

